プロニートの履歴書

色んなできごとに翻弄され、プロのニートになるまでの物語

今だからわかる「日本人」という病

いつだったか、何かのきっかけがあって河合隼雄さんの本を何冊か読んでいる。
河合さんは日本ではじめてユング派分析家になった心理学者です。

『人のこころなどわかるはずがない』と読んだ本の一文が忘れられず、そんな…心理学の第一人者がわからないと言っているのに、簡単にわかった気になってる私たちってなに…?と衝撃を受けたのが最初だったかと思います。

なんとなく心理学というのは堅苦しそうな気もしてたけれど、河合さんは人柄なんでしょうね。深く考えさせられる場面は沢山あるけれど、どれもすぅっと心に染み入るような読みやすい本です。

 

というわけで、今回は「日本人」という病についての本の感想です。

 「日本人」という病

日本人であるということは、すごい病気です。これは、私にとっては、という意味です。みなさんにとって、そうでないかもしれません。病原菌と同じで、いくら病原菌が入っても、病気にならない人もいますし、病気になる人もいますが、私は「日本人」というヤツが、とうとう病気になって発病したのです。この「日本人」という病を、私はどう生きるのか。

「日本人」という病 (静山社文庫)

「日本人」という病 (静山社文庫)

 

河合さんは若い頃にアメリカやスイスで研究生として学んでいたためか、日本人の個性に関することがどの本の中でも述べられています。

個性、これが日本人にとって本当にわかりにくい。どれだけわかりにくいことなのかを切々と語っているのですが、私自身が同じぐらいの世代の時に海外に住んでいたことや、もともと産まれながらにバリバリの個人主義者であることから、そうなのよね…、日本で個人として生きるのは生きづらい、とも感じています。

ここがまさに「日本人」という病で、私は個人主義でありながら、日本育ちなので個性を認めない社会背景も理解できてしまう。

これが本当に外国人であったなら、自分は個人主義者だけど、みんなもそうだからそれでいいでしょう?となるところが、そうはいっても実際、例えば子どもの頃、友達と一緒にトイレに行かなかったというだけで、周りの人から「ハルちゃん、あれは一緒に行かないとまずいよー」などと言われて、???となるんですが、それはそれで気まずい思いをすることもあるわけで。
なんとなく、みんなと一緒に同じことをしないといけない空気感があるのはわかるのですが、理由がわからない。

 

今ではそこそこ多様性が認められていたり、個性がなんとかという方もいるんですが、個性だ!個性だ!と言いながら、その個性的な人たちが集まって、やっぱりグループ意識を持って行動を共にしている、というのもまた???になるんです。

で、結局どっちなん?と問いただしたくなる。

それでも、人は言ってることとやってることが違ったり、そういった矛盾を抱えてるものなので、それはそれでいいんじゃない?と区別できるところが、私を個人主義にしているのかもしれません。

 

個人主義がいいか、全体主義がいいのか、それはどっちもどっちでどちらがいいという話ではありませんが、これまで日本は全体主義だったので(そして西洋化も進んでしまったので)、個人主義に憧れる傾向があるものの、実際は何が個なのか、とてもわかりづらい。

なぜなら、根底にある宗教性が違うから。

『individual(個性)という言葉自体が、divide(分ける)という機能があることを示しているからである。』という一文には目から鱗でした。神と自分を分けること、それがキリスト教的な宗教性なのです。日本ではあれもこれもどれも神ですから、分ける必要がないんです。死んだら人も仏です。なので、人もつらつらっと並列にみんな同じという分け隔てのない全体主義になるわけです。

 

しかし、これもまた私を困らせる要因のひとつで、私は神道にも仏教にも囲まれて育った。これはもう日本の生活の隅々まで行きわたっていて、どこに宗教性が含まれているのかもわからないぐらい混沌とした宗教観の中で生きている。

ところが、私は途中でキリスト教に傾倒して、日本古来の宗教観もわかるけれど、どちらかといえば、神様はあの天にいるひとりなんじゃないかとも思ってる。大抵の日本人が自分は”なんとなく仏教徒”という意識を持っているのと同じように、私は”なんとなくキリスト教徒”なのです。ある意味では、神様という概念にフレキシブルな日本人だったからこそ、他国の神様も信じることができたのだけど、そういう西洋と東洋の中間にいる人はどうしたらいいのだろう?と悩みも多い。とても現代的な悩みだと思います。

 

河合さんの本には、どこにも答えなどは書いてありません。ここがまた心理学者のすごいところなのでしょうが、すぅっと時間をかけて、どこかで何かが響く、そんな感じの言葉の本なんですよね。

意識の変革は大変な作業です。これまで信じていたものを取り払う、自分の根底がグラグラと揺らぐ、そんな作業ですが、特に今は日本も世界もグラグラ揺れているので、そういうことを考える人も出てきているのかな、と思ったりもします。

私自身はそれがニートの仕事だと思うところもあるのですが、まあ、生きてるうちにいつか、なんとなくわかる日が来ればいいのかな、と思います。 

 

それではまた。